商人欲求

もうすぐ社会人になる学生です。教養は大事。

入院生活を通じて感じたこと

 3月上旬に就職活動が本格的に始まったというのに、その頃僕は病院で入院生活を送っていた。歯の矯正手術のためである。う~ん、なんとも絶妙なタイミングぅ~。

  

 いつの頃からだかしらないけど、僕のあごは時を重ねるごとにしゃくれていった。アン〇ニオ猪木ほどまではいかないけど、下あごがちょっと前に出てる程度。中学高校の頃にそれでイジられていた思い出もあったw それに加え、噛みあわせがずれていた。周りから治した方が良いと言われ、自分でも気になっていたので、ついに大学在学中に矯正治療を行うようになる。僕の場合は、歯の矯正治療だけでなく、あごの外科手術を行わないといけなかったため、口腔外科でアゴを切断する手術をする必要があった。

 噛みあわせが合わないと身体のいろいろなところで支障が出るらしい。噛みあわせが合わないと、食べ物がうまく噛めなくて消化不良に陥るとか、背骨がゆがんで姿勢が悪くなるとか、顔が左右非対称になるとか。もっといえば、噛みあわせが悪いと自律神経が乱れて精神疾患に陥るケースもあるんだって!  とにかく、噛みあわせは人の健康を維持するうえではキホン中のキホンらしい。

 

 小学生に盲腸にかかったとき以来の入院だったけど、入院前日はすごく緊張した。いくら麻酔で痛みは感じなくとも顎を切断する手術であるからゾッとした。

 しかし、手術当日は不安も心配も抱かなかった。「もう俺タヒんでもいいや・・・」とか思ってたけど、今回の矯正治療に関わる手術は以前から知っていたことだし、それなりの覚悟はできていた。

 手術室に入る直前まで両親が見送ってくれていたけれど、手術室の扉が閉まると、もう両親の顔が見れなくなるんじゃないか、術後は生きているか、という先行きが見えない不安に襲われたけど、まぁ、そんなことはないはずだから気楽に行こう、とポジティブ思考にチェンジ。

 

 手術室に入るとまずベッドのうえに寝かされ、僕の身体に次々と心電図や点滴などの管が取り付けられる。麻酔科の女性の先生が「眠くなるお薬を注入しますね」とやさしい声で伝えてくれる。今回は全身麻酔を行い、腕、口、鼻といった多くの部位に麻酔を注入した。最初に注入した麻酔ですでに眠った。そこからの記憶は一切ございません!まさかあんな早い段階で眠りにつくなんて思ってなかった!あとで聞いた話によると、7時間くらい手術が続いたらしい。自覚症状がない間に体をいじられているなんて想像つかないくらい、僕は深い眠りについた。むかし、あるテレビ番組で、麻酔はどういう仕組みで人間を昏睡状態にしているかは医学的に証明されていない、ってきいたことあるけど今はどーなんだろ?

 

~数時間後~ 

 

 目を覚ますと、目の前は真っ暗だった。目蓋を閉じているわけではない。そこは集中治療室(ICU)で、術後はそこで一晩過ごさなければならなかった。体中麻酔がかかっていて身動きできず、金縛りにあったような感覚に陥っていた。すると、隣にいた看護師さんから「これからここで一泊します。なにかありましたらナースコールでお呼びください。ではおやすみなさ~い」と声がかけられた。ようやく自分の状態に気が付いた。よく部屋を見渡すと、壁には時計と思わしきモノの針が9時を指しているのがみえた。病院は9時消灯であるから、看護師さんの言っていることが納得できた。自分の右手にはナースコールが握られているのがわかる。「えっ、さっきの手術のときは昏睡状態でいたのにまたこれから寝るのかよ・・・」そう絶望しつつも僕は眠りにつこうとする。・・・ん?左手にもなにやら細いチューブのようなものを握っているのがわかる。僕は不思議に思いナースコールで再び看護師さんを呼ぶ。その時だった。麻酔が残っていたせいで口が全く動かず、まともにしゃべれないことに気が付いた。仕方がないから、なにか書くものをくれ!と必死のジェスチャーで看護師さんに伝えた。意識はちゃんとあったから字はなんとか書けた。看護師さんは、「睡眠中はタン(つば)が鼻から口にかけて詰まるので吸引器(チューブ)で吸ってください。タンはすぐ出てくるからすぐに吸わないといけないので、今夜は熟睡できないかもしれませんねぇ~^^;」僕はさらに絶望した。真っ暗な部屋で身動きできずこのまま9時間(6時起床)寝れないのかよ・・・。その夜はほんっっっとに辛かった。暗いし動けないしのど痛いし鼻水は出るし、こんなつらい思いをする夜はいつ以来だろうか。せめてテレビくらい見たかったけど、ICUにはそのような娯楽要素は無かった。

そして9時間もの死闘(?)の末、やっと普通の病棟に移ることができた。まさに実家のような安心感。手術という山を越えたあとには、テレビや僕の持参した本などのごほうびが僕を待っていた。

 

術後のほうがいろいろたいへんだった。食事は流動食で固形物は一切口にできなかった。顔が腫れて見た目も良くなかったし、口がまともに動かずまともにしゃべれなかった。

そんな入院生活を送っていたうえで感じたことがある。なにげなく過ごす日常生活がどんなにありがたいことかということを。おいしいものを食べることができ、スポーツ好きな人にとっては体を思う存分動かすことができるし、不自由なく暮らせる。病院ではそのような自由は制限されており、そこにしばらく暮らしているとそんなことを思うようになった。

 

今回の入院生活を通じて、日常生活のありがたみをすごく考えさせられました。

これからも歯医者さんで矯正治療は続くけどがんばります・・・っ!